小惑星探査機『はやぶさ』見学 in 京大総合博物館
平成23年2月5日午前10時半より、京都市左京区の京都大学総合博物館において、
高校生を対象に、パーツの実物や関連資料が展示中の小惑星探査機「はやぶさ」の見学会を実施した。
解説役は、数学教諭として高校生に身近な存在である一方、研究者として宇宙航空研究開発機構(JAXA)で国際宇宙ステーションの実験棟「きぼう」の開発に携わった経歴をもつ京都市立堀川高校の井尻達也教諭にご協力いただいた。
参加者は大阪の天王寺高校をはじめ、京都や兵庫、奈良などから7名。
会場では、小惑星「イトカワ」由来の微粒子を収めていた直径40センチほどのカプセル部分など7点が展示されていた。機体を保護する「背面ヒートシールド」には熱で焼けた跡が残り、60億キロの旅の過酷さを感じさせ、参加生徒たちはのぞき込んだり、メモを取ったり熱心に見学していた。
見学後、井尻教諭による解説が行われた。井尻教諭は「はやぶさ」が成し遂げた世界初(地球重力圏外の天体の固体表面に着陸したこと、月以外の天体から地球に帰還したこと、表面の砂を採取し地球に帰還したこと)を紹介し、その成功を導いた技術について数学や物理の知識と結びつけて参加者に説明した。
参加した高校生たちは、
▽惑星の重力と公転速度を利用して加速や軌道変更を行う「スイングバイ」という技術では、「ベクトル」の考えが用いられている
▽地球からの指令を送る通信に使われる電波の波形は「三角関数」で表される
▽はやぶさが小惑星イトカワに到達するために加速する方向は「微分」で求められる
といった説明を真剣な表情で聞いていた。その表情からは、高校で学習する知識が
宇宙探査という人類の壮大な営みを支えていることへの驚きがうかがい知れた。
また、井尻教諭は、孔子の言葉を引用して
「過っても改めない。これを過ちという。失敗を失敗にしない。成功の陰には
失敗を失敗にしてこなかった積み重ねがある」と、通信の途絶やロケットの故障など
「はやぶさ」の様々なトラブルを乗り越えた科学者を称えた。
解説の最後には、「『はやぶさ』の本当にすごいところは世界初の偉業よりも、
そのことに『挑戦』したこと」と締めくくり、高校生たちに「挑戦するかしないか。
たった一度の人生。挑戦する人生の方が面白いと思う。
その目標もどうせなら誰もしたことのないものがいい。できないかもしれないけどやる。
できないと思うことこそやる。それが挑戦だと思う。成功か失敗かではない。
幾多の失敗のその先にこそ成功がある」とメッセージを送った。