レントゲンって、なんだろう???

◯レントゲンって何?

レントゲンって何か知っていますか?
病院に行くとレントゲンを撮られたりします。体が透けて、骨が見えるあれです。
これをお読みの皆様は、あまり撮られたことがなくても、聞いたことぐらいあるのではないでしょうか。
この「レントゲン」、元をたどれば、骨を撮る装置や体が透ける技術の名称なんかではなく、実はれっきとした人の名前です。

Wilhelm Conrad Röntgen レントゲン

quote from Nobel Prize.org : Wilhelm Conrad Röntgen

では、どうして病院で名前を耳にするのでしょう?
それはドイツの物理学者であるレントゲン博士(Röntgen, W.C. 1845-1923)が、1895年の暮れ、偶然「X線(レントゲン線)」を発見したことに端を発します。
折しも、陰極線(電子が真空中を飛んでいるもの)の性質について研究中のことです。陰極線の発生装置に、うっかり紙のカバーをつけたまま、実験をしてしまいました。普通なら、実験失敗というところですが、彼は、そばにあった蛍光物質1の塗ってある紙が光っていることに気づきました。何かがカバーを通り抜け、蛍光物質を光らせているのです。そして、「何かわからない線2」という意味を込め、これを「X線」と名付けました。

彼はその後、X線が体を透過できることや写真のフィルムを感光させられること3について研究し、X線は発見者の名前をとって「レントゲン線」とも呼ばれるようになります。これが医学に応用されるにいたり、「レントゲン」という形で後世に名を残しているわけです。なお、レントゲンはX線写真と呼ばれることも多く、以下それに習います。

X-rays レントゲン写真 : 指

X-rays レントゲン写真 : 指

X線は、知っている人も多いと思いますが、放射線の一種でして、物質(人体)との相互作用(吸収や反射)が、目に見える光(可視光線)に比べて少ないのが特徴です。この ため、X線管(X線の発生源)から出たX線があまり反射・吸収されずに体を通過でき、体の向こうにあるフィルムを感光させることができます。ですので、目で見ても胸が透けて 見えることはありません4が、胸のX線写真では骨や肺が透けて見えるのです。なお、X線も多少は体で吸収され、その吸収の程度が骨や肺などで違うために、写真の濃度差として表すことができ、この辺の微調整も専門的には行なわれています5

X線写真を撮るためには、多少吸収されるくらいがよいのですが、この吸収が放射線の被曝(ひばく)ということになります。赤外線で温度が上がるように、X線が体に吸収されると活性 酸素(≓フリーラジカル)が発生し、命の設計図であるDNAがダメージを受けます。医療用で用いられるX線の大半は微々たるもので、普通はあまり心配はいりません6

19世紀末のレントゲン博士による発見から、まだ120年程度であるX線(レントゲン線) の歴史の中ですが、その技術は目を見張るような進歩を遂げ、医療にとどまらず、天文学の研究や非破壊検査など幅広い範囲に応用されています。

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  1. 蛍光物質とは、光を吸収して他の色の光を出す物質です。この光とは目に見える光に限らず、たとえば、多くの洗濯用洗剤には、紫外線を吸収して青い光を発する蛍光物質が入っており、洗濯物をより白く見せています。 []
  2. ここでの「線」とは「周囲に飛んでいくもの」というような意味です。 []
  3. 昨今は写真といえばデジカメですが、昔はフィルムに塗った特殊な物質に光をあてて濃淡を出し写真にしていました。感光とはこの物質に濃淡をつけることです。 []
  4. 可視光線は(レンズや水晶体などを除く)人体の構造物との相互作用が大きいですので、奥が透けては見えません。 []
  5. 詳しく知りたい人は、「高圧撮影」・「軟線撮影」などで検索すると何か出てくるかもしれません。 []
  6. 本稿は医学的助言をするものではありません。不明な点があれば医師などに相談して下さい。 []

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